2022年12月に2023年度与党税制改正大綱が制定される関係で、NISA改正の情報が徐々に報道されつつあります。

個人投資家界隈もざわつき始めています
すでにつみたてNISAを始めている人はもちろんのこと、これからちょうどつみたてNISAをしようと考えていた人にとっては悩ましい状況ですよね。
現行のつみたてNISAを先に始めておくべきなのか、それとも新しくなってから始めるべきなのか?
つみたてNISAの最新情報とともに、その答えを解説します。
「ややこしそうだからとりあえず保留」する前に、どうぞご一読ください。
つみたてNISAとは
まずは現行のつみたてNISAについて簡単におさらいしましょう。
まず一言でつみたてNISAを表現すると、「投資を介した免税制度」です。
投資による利益には通常20.315%の課税がされますが、つみたてNISAを利用することで免税されます。

100万円の利益が出たら約20万円の税免除だからメリットはデカい
もちろんこれだけだとバグレベルの優良免税制度ですので、しっかりと年間投資額40万円以下、枠は翌年に持ち越しできないなどの制限がかけられています。
現行のつみたてNISAの制度期間は2042年まで、制度の最長使用期間は20年ですので、最大限に活用しようとすると2023年分から始める必要があります。
つみたてNISAの最新情報
さて次に現時点で判明している、あるいは有力視されている最新情報をまとめます。
- NISAとつみたてNISAの両制度を一本化
- 非課税期間を無期限に
- 制度運用期間も無期限に
- 生涯の投資上限額は1,800万円
- うち1,200万円は「成長投資枠(仮称)」とする
- 年間投資上限額は投資信託120万円+成長投資枠240万円=360万円
ITmediaNEWS様がとても分かりやすい図を公開されていますので引用します。

成長投資枠は現行のNISA(≠つみたてNISA)を名称変更したものとして報道されていますが、これに関しては蓋を開けてみないと分からないと思っています。

これは個人的見解です
つみたてNISA部分に焦点を絞って考えると、年間投資可能(上限)額が120万円に増えるものの、総投資上限額が600万円に減る見込みです。
よって制度改正によるメリット8:デメリット2といった印象です。
ただしいつでもいつまでも投資が可能ということになったのは100%改善であり、制度設計の意図を推察すると非常に良く練られている改正案であると感じます。
また成長投資枠でもつみたてNISAと同じ優良な投資信託を利用できるならば、総投資上限額が800万円→1800万円の大盤振る舞いということになります。
つみたてNISAをいつから始めるべきなのか
さて、本題に入りましょう。
「2022年中あるいは2023年のどこかから始めようと考えていた人」はどう動けばいいのでしょうか。
結論から言うと「どこから始めるかは入金力次第」です。
一つずつ解説していきます。
2023年の旧つみたてNISAに投資すべきなのか
さてここからは便宜上、2023年までのつみたてNISAを「旧つみたてNISA」、2024年改正以降のつみたてNISAを「新つみたてNISA」と表記します。

単に記事内でそう呼ぶだけで正確な名称じゃないぞ
2024年に予定通り制度改正が行われるとしても、旧つみたてNISAには2022〜2023年中であれば投資が可能です。
この旧つみたてNISAの枠は使うべきでしょうか?使わない方がいいでしょうか?
2022年12月14日時点では、旧→新へのロールオーバー(制度間での投資移行)ができるといった情報はありません。
おそらく2023年中に旧つみたてNISAで投資した分(最大40万円)に関しては、そのまま旧つみたてNISAのルールに従って2042年まで非課税で維持できます。

ここをいじくるのは制度改正の難易度が上がるので無いと踏んでいます
さてでは旧と新に同じ40万円を投資するのでは、個人投資家にとって何か有利不利が出るのでしょうか?
答えは「YesでありNo」です。
旧つみたてNISAでは非課税期間が20年で設定されていますので、20年がすぎると課税口座に資産が移され、2043年以降で生まれた利益は課税されます。
一方、新つみたてNISAでは「非課税期間は無期限」とされています。

今のところは、な
つまり元手の40万円が21年以上の長い月日を経て成長し十分な果実が得られた時に、旧では一部が課税され、新では課税されないということです。
旧つみたてNISAの制度では、非課税期間が終わった時点の資産時価が初期投資額として扱われます。
つまり仮に40万円が20年後に100万円分の資産になっていたとするならば、21年後に100万円を投資したという扱いになります。
そこから更に資産を保有し続けて例えば5年後に120万円になってから売却すると、差額20万円×約20%=4万円が税として徴収されます。
その場合は1年待って新つみたてNISAで25年運用を続けた方が、かなりの確率でリターンが良くなると考えられます。
しかし発想を変えてみましょう。
21年目以降の利益に課税されると言うのならば、20年目の非課税期間が終わった瞬間に売却すればいいのです。
それであれば課税額は”ほぼゼロ”になるはずですので、売却資金を元手に違う投資をするもよし、生活の足しにするもよし、新つみたてNISA枠で再投資するもよしです。
新つみたてNISAの投資上限枠(生涯で600または1,800万円)を使い切れる投資能力があるのならば、40万円/年の旧つみたてNISA非課税枠を上積みした方がどう考えてもお得です。

この投資能力のことを投資界隈では「入金力」と言います

ごく一部には、入金力でマウント取りに来るめんどくさい奴もいるぞ
よって最初の問いに対する正確な答えは「21年以上持ち続けるなら不利、20年以内で売却するなら有利」となります。
よって入金力が十分にある人にとっては、2022〜2023年分の旧つみたてNISAはしっかり使い切るべきであると結論付けられます。
入金力が高くない人はどうすべきか
さて世の中の大多数の人は年間360万円(=30万円/月)はおろか、年間120万円(=10万円/月)の投資資金を確保するのは難しいでしょう。

家や車のローン、生活費、子どもの学費…色々出費がかさみますからね
つみたてNISAをすでに始めている人の2021年平均投資額は約¥14,000/月(日本証券業データより算出)です。
これからつみたてNISAを始める人も恐らく似たような投資額になるでしょう。
こういった年間上限額を使いきれない層の人たちにとっては、”おそらく”新つみたてNISAを待って開始した方が有利です。
つまり旧つみたてNISAにお金を入れるくらいなら、2024年からの新つみたてNISAから投資した方が良いということです。

“おそらく”としたのは来年の株価予測が計算に入ってくるからや
仮に40万円分の投資信託を30年間保有し続けるとして、年率5%の利回りで再投資し続けた(投資の王道パターン)としましょう。
旧つみたてNISAを使った場合は、2042年には資産額は約109万円となり30年後の2052年には約179万円となります。
よってトータル利益は179ー40ー{(179ー109)×0.2}=125万円となります。
一方、1年待って新つみたてNISAを使った場合は、28年5ヶ月後(2051年中盤)には約165万円となり旧のリターンに並びます。
それ以降の利益は当然非課税である新つみたてNISAが有利なため、損益分岐点はおよそ29年後と言えます。
仮に40万円ではなく20万円を旧つみたてNISAに投資したとして計算すると、損益分岐点は22年10ヶ月後となります。
もちろんどちらのケースも、2023年中に株価が爆上がりして2024年に高値掴みから始まった可哀想なケースでは損益分岐点がもっと後になります。
しかし常識的な範囲内の株価変動で考えれば、20〜30年後以降では新つみたてNISAが有利になるでしょう。

ちなみに2023年は高確率で景気後退と予測されているぞ
ちなみにこの考え方は共働きであっても同様で、例えば「二人のお小遣いを足せば上限額までいける」パターンも”入金力は高くない”と考えるべきです。

夫婦二人分の枠があるから、世帯として投資可能額が増えようが一緒です
ちなみに40年投資で考えるとどれだけ差が開くか
参考例として今30歳の社会人が手元の40万円を投資して、定年の39〜40年後(70歳)まで保有したらどれだけリターン(元本含まず)に差が出るかを計算します。
計算式は先の通りなので省きまして、結果は「旧つみたてNISA40年:217万円」「新つみたてNISA39年:240万円」です。
新旧のリターンは23万円と、たかが開始1年の違いが大きな差を生むことが分かります。
ちなみに元手40万円かつ1年で23万円を稼ごうとすると年利74%という投資詐欺じゃないと起き得ない利回りが必要となります。

投資の神様と世界中で崇拝されている人でさえ平均年利20%です
そして更に長期スパンで見れば見るほど、この差は加速度的に広がっていきます。

アインシュタインが絶賛した「複利の力」ってのはこういうことや
判断の分かれ目は入金力と成長投資枠の扱い
2023年中に旧つみたてNISAを使うべきかどうかは、先述の入金力が大きな判断基準となります。
そしてその入金力には新つみたてNISAの成長投資枠(仮称)でも優良な投資信託が選べるかどうかもかなり影響します。

もし選べるなら月額30万円の入金力が問われることになる
もしかすると最後の最後で「成長投資枠は日本個別株限定」とか「国外への投資を主とするファンドを除く」とかのエクスキュースをつけてくるかもしれません。
本記事で取り扱った内容はあくまで最新情報であって確定情報ではないことに注意し、しっかりとニュースを追っていきましょう。
当ブログでは投資に関係する話題の最新情報も記事化しますので、新たな展開が出ればそちらの記事のリンクを貼っておきます。
また「つみたてNISAを始めてみたいけど始め方が分からない…」という人は以下の記事も参考にしてくださいね。

では次の記事でお会いしましょう!

またな
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