起業を目指すなら必ずやっておきたいことをご存知ですか?
それは事業収支のシミュレーションです。
事業収支のシミュレーションは、自分が思い描く理想の経営を数字で形作っていく作業です。
これをしないことには本格的な事業計画も作れませんし、事業計画が作れなければ融資も受けられません。
そもそも数字の根拠が無い、出たトコ勝負はやばい
本記事で紹介するシミュレーション方法は、起業するための準備運動みたいなものです。
本格的な計画作成ではありませんので、特別な知識は要りません。
嘘つきました。ちょっとだけ要ります
起業を夢見ているけど何から手を付けたらいいか分からない人は、まず事業収支のシミュレーションをしてみてください。
そうすればあなたの起業が夢物語なのか、実現しそうな目標なのかが判断できます。
一緒に勉強していきましょう。
事業収支のシミュレーションとは
事業収支のシミュレーションとは、思い描いている事業が持続的な経営が可能なのかをざっくりと計算する作業です。
本格的な精度でやろうとすると、コンサルティングのプロの力が必要となりますのであくまでざっくりとやりましょう。
シミュレーションの目的
シミュレーションの目的は、明らかに無理筋な起業計画をしていないかの確認です。
右も左も分からない状態では、無茶な計画と気づくことすら難しいです
ざっくりと考えて無理なものは、細かく詰めようが無理です。
まずは思い描く事業が、ある程度現実味のあるアイディアなのかを検証しましょう。
個人事業主の給料はどこから出る?
さて、シミュレーションを始める前に大前提の知識をおさらいしましょう。
個人事業主はサラリーマンと違って、他人から給料を保証されていません。
厳しいですが食えるかどうかは全て売上次第です。
ただし100万円売上が上がっても120万円経費がかかっていては赤字です。
だから経営には営業利益というものが求められます。
「営業」ってつくのは、その事業単独での利益と思えばOK
営業利益が上がれば、それが個人事業主にとっての給料であり同時に事業の運転資金です。
給料ではありますが、全部使ったら運転資金がショートします
事業収支シミュレーションのやり方
さて早速シミュレーションのやり方を解説していきましょう。
事業収支のシミュレーションは以下のような手順で行います。
- 予想売上を計算する
- 予想経費を計算する
- 売上ー経費が黒字になるか検証する
①予想売上を計算する
まずステップ①として予想売上を計算してみましょう。
早速やり方が分からなさ過ぎて意味不明
大丈夫です。1個ずつ説明します
さて売上とは以下の計算式で成立するものです。
- 売上=成約数 × 客単価
成約数とは売買が行われた数、客単価とは1人あるいは1組あたりの平均売上です。
ちなみに事業計画では月単位で考えることが多いので、「1月当たり」でそれぞれ考えましょう。
以下ではデータが取りやすい実店舗型で説明するぞ
まず月間成約数についてですが、これは事業の先行者を調べることである程度推測できます。
例として焼肉屋を立ち上げたいと考えている人がいるとします。
ある地域を調べていたら、目標にすべき個人経営の焼肉屋さんを見つけました。
仮にその店舗を20席、客席稼働率50%と判断し、1回転1時間で夜営業3時間、月に24日営業とすると、成約数は以下のように求められます。
- 月間成約数=20席 × 0.5 × 3回転 × 24日=720
店舗の情報は実際に店にご飯を食べにいけばある程度は得られます
次に客単価を考えましょう。
客単価も目標店に行って実際のサービスを受けるのが一番です。
ただし、メニューや料金表、店の価格帯などからも、ある程度は推測することが可能です。
複数店舗に行く余裕が無い場合は、ネットで調べながら計算しましょう
仮に先述の焼肉屋さんが客単価¥5,000程度としたら、売上は以下のようになります。
- 月間売上=720 × ¥5,000=360万円
②予想経費を計算する
さて売上の予想が立ったところで、今度は経費の予測をしてみましょう。
経費には細かな項目がいっぱいありますが、本シミュレーションでは大きな割合を占める以下の項目に絞って考えましょう。
項目を絞って予測してるのに赤字になる=無茶な計画ってことか
原価
原価もしくは原価率というのは業種によって大きく異なります。
例えばコンサル系や士業の相談業務、アフィリエイトなどなら原価はほぼゼロです。
なぜなら売り物は自分のスキルだからです。
逆に仕入れて売る小売業であれば、原価は絶対に発生します。
せどりをしたことがあるなら、これは実感湧きますよね
業界の平均原価率を調べるなどして把握し、売上に原価率をかけて原価を算出しましょう。
人件費
個人事業主泣かせの経費その1です。
想定する従業員数の月給や時給(額面)を考えてみましょう。
自分は数に入れるなよ
アルバイト(パートタイム労働者)でも正社員でも契約社員でも、その時点での最低時給は下回れません。
もし最低時給がいくらか知らない人は、一度想定地域のものを調べてみましょう。
月給制の社員でも、時給換算して最低時給を下回ったら労基法違反です
そして給料から総額の人件費が計算できたら、そこに「116.5%を乗算」してください。
それが雇い主側が支払う人件費の総額です。
16.5%は法定福利費の概算利率や
先の焼肉屋で従業員を2人、月給20万円で雇用すると総額46.6万円の人件費が発生します。
地代家賃
地代家賃とは要は家賃とか土地代とか駐車場代とかです。
個人事業主泣かせの経費その2ですね。
賃料はat homeなどの賃貸サイトで「貸店舗」や「貸事務所」などを調べたら、地域の相場がわかります。
坪単価で〜万円/月とかで表記されることが多いです
ネットで完結する情報ですので、積極的に調べてみましょう。
都心部で駅近を探そうとすると最低でも1〜3万円/坪/月は見込んだ方が無難です。
ちなみに事業用店舗はなぜか賃料に消費税が発生する
駐車場も借りるならば駐車場代も1〜3万円/台/月くらいは見込む必要があります。
家賃同様に賃貸サイトで相場を確認しましょう。
水道光熱費
水道光熱費は事業内容によって大幅に上下がある経費項目です。
仮に飲食店経営であれば数万〜下手したら10数万円/月ほど発生する可能性があります。
逆に事務所利用などでは、使い方次第では自宅より水道光熱費が低くなったりします。
これもやはり事業内容に準じて相場を調べてみましょう。
ローン返済
実店舗型であれば多くの人は起業の際に融資を受け、そしてローン返済が発生するでしょう。
ローン返済は個人事業主泣かせの経費その3です。
通常は融資後1年程度は返済猶予(利子のみ返済)期間がありますが、以降は元金も含めた月々の返済が必要となります。
返済計画(返済期間、利率)にもよりますが、1,000万円分の融資につき元利合計で8-10万円/月ほどを見込みましょう。
3,000万円の融資を受けたら、月々の返済は24-30万円です
35年返済なんて組んでくれないから住宅ローンより返済額は強烈やぞ
確定申告での納税分
今までの経費で何か抜けていることに気づいたでしょうか?
そう、税金です。
個人事業主として大きく関わる税金は「消費税」「所得税」「個人事業税」「固定資産税」あたりです。
これらは翌年2月から始まる確定申告で一気に支払いが発生します。
ですので月々でこれらの税支払い用に資金を確保しておかなければいけません。
税金支払いは最初からキャッシュフローに組み込んでおくべき
ただし支払額を正確に求めるには労力が大き過ぎます。
ですので全てひっくるめて「売上の10%を税金として抜かれる」くらいに考えておきましょう。
③売上ー経費が黒字になるか検証する
さて、ここまで来てようやく概算の項目が出揃いました。
それら金額を使って事業が黒字になりそうかどうかを検証してみましょう。
引き続き焼肉屋の例で見てみます。
下の数字はなめくじがそれっぽく当てはめました
- 月間売上=360万円
- 原価30%として計上、残り252万円
- 人件費46.6万円を引いて205.4万円
- 地代家賃を30坪 × 1万円=30万円として残り175.4万円
- 水道光熱費を売上の5%として18万円計上、残157.4万円
- ローン返済を月10万円として残147.4万円
- 税金分36万円が抜かれて111.4万円に
さて、手残りは111.4万円となりました。
本来は更に細かな経費を計上しなければいけませんが、本シミュレーションでは置いておきましょう。
通信費とか保険料とかまだまだ経費は発生するぞ
仮にこの時点でマイナスになっている場合は、無茶な事業計画であると言えます。
起業を諦めるか、事業内容を抜本的に変えなくてはいけません
ちなみになんとかプラスになるように、お手盛りで計算してはいけません。
なぜなら現実には計算以上の支出や予測不能のトラブルが待っているからです。
本シミュレーションはあくまでざっくりではありますが、その範囲内では自分や事業にとって厳しく見積もることをお勧めします。
例えば家賃が25-30万円のレンジなら30万円で計算するなど、経費は最大化しておくと起業時の倒産リスクを減らせるでしょう。
注意書き
さてここまで見て、「しちめんどくせぇなぁ」と思った人もいるかもしれません。
もしそうならその考えは改めたほうがいいです。
なぜなら経営者というのは店の中で最も数字にシビアであるべきだからです。
従業員は最悪店が潰れても、再就職すれば普通に生きていけます。
一方の個人事業主は、事業が軌道に乗らず潰れると下手したら一生かけてローンを返済し続ける地獄の人生が待っています。
ぐぇぇ
融資を受けて起業というのは、投資でいえばレバかけているのと一緒です
残念ながら経営者というのはそういうものです。
だからこそ自分や自分の家族の未来が破滅しないように、事業計画や数字計算で手を抜いてはいけません。
リスクとリターンが見合うか判断する
さて、一通り営業利益が予測できたかと思います。
最初に述べたように、その利益は個人事業主の給料であり事業の運転資金です。
その期待リターンが起業によって背負うリスクに見合うかどうかを判断してください。
ある意味最も大事なポイントやな
例えば著者のなめくじは5,000万円の融資を受けて起業しています。
月の損益分岐点は売上200万円程度であり、それ以降の売上は私の給料兼運転資金となります。
月商400万円を出したらざっくりと150万円ほどの給料になります
事業が成長し年商5,000万円程度に到達した場合は、年収2,000万円程度相当となりサラリーマン時代を大きく上回ります。
私の数字はあくまで一例ですし、仕事やお金の価値観は人それぞれではあります。
しかし一方、起業リスクを背負うならそれなりのリターンが欲しいのも事実でしょう。
事業収支の予測が立ったら、それが自分が起業リスクを負うに値する給料かどうかを考えてみてください。
最後に
いかがだったでしょうか。
起業を夢見て、でも何から手を付けたらいいか分からない人向けに事業収支シミュレーションの方法を解説しました。
もちろんこの方法は細かい部分をかなり省いた計算ですので、完全に当てにしてはいけません。
しかし少なくとも、思い描く起業が全く無茶なものか、もう少し検討していいものかを判断できるようになります。
この計算に慣れてから店に行くと色々想像できて楽しくなるぞ
店のサービスが妥当な金額かも判断できるようになってきます
さて起業には幅広い知識が求められます。
それらを全て個人事業主が網羅するのは骨が折れますので、ある程度は専門家に外注するといいでしょう。
それでも本記事の内容くらいは、自分で把握しておくことをお勧めします。
もしこの数字計算すらできないと、万一変なコンサルや税理士などに当たった場合に大変危険です。
知り合いの親方は、外部に数字管理を丸投げしてた時代にカモられたそうです
ですので起業に向けた必修科目と思って、ぜひ繰り返し実践してみてくださいね。
では次の記事でお会いしましょう!
またな
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