貯金って、できていますか?
人生にはトラブルがつきものです。
転職によって収入が減った、産休・育休により収入が減った、病気で無収入になった、クビになった…中には勤めていた会社が倒産したなんて経験をしたり聞いたりした方もいるのではないでしょうか。
日本社会はそういった突発的なトラブルで国民の生活が完全に壊れてしまわないように「失業保険」や「生活保護」でセーフティネットを張っています。
それでも全ての人をそれらのセーフティネットで救える訳ではありませんし、条件に該当したとしても実際の公的扶助が行われるまでにタイムラグが起きたりします。
公助は最低限あるものの、そこを当てにするのは最後にしてまず自分で生活を守る努力が必要です。
本記事ではそんな自分の生活を守ってくれる貯金=生活防衛資金について解説していきます。
今貯金ゼロでカツカツの生活をしている人、本当にヤバいですよ?
結論
なぜこの記事を書こうと思ったのか

知人の勤めている企業で突発トラブルが起きた際に、給与の遅配(10日間)によって賃貸の家を追い出されるかどうかの瀬戸際にある方がいるという話を聞きました。
もちろん遅配を起こした企業が悪いのは大前提ですが、現実には給与遅配1回分レベルのトラブルは人生で何回も起き得ます。
そんなただ1回のトラブルだけで生活が破綻する人がなるべく出ないようにと思い記事をまとめてみました。
お心当たりのある方はぜひ生活設計の見直しをお勧めしますよ!
想定するトラブル一覧
以下に挙げたトラブル1個1個が発生する確率はごくわずかでしょう。
しかし、向こう10年、20年のうちに1個でも当てはまるとなるとそれなりの確率で身に降りかかってきます。
ぜひ、これらトラブルが低確率であるからと無視せず最低限の備えをしておくことをお勧めします。
これらのうち1個でも起きる確率が意外と高いのは、100年に1度クラスの気象異常が数年に1度起きるのと同じ理屈ですね
現在の国民の貯蓄状況

総務省統計局の令和2年家計調査報告によると、2人以上の世帯のうち勤労者世帯では中央値826万円、平均値1378万円だそうです。

同じ令和2年の別調査では、消費支出は月平均30.5万円だそうなので低いほうの中央値で見ても27ヶ月分の貯蓄ができている計算になりますね。
多くの方がしっかりと生活設計をして、貯蓄=生活防衛資金を確保している現状が伺えます。
十分な生活防衛資金が無いリスク
問題は100万円未満の11.4%に該当する世帯です。
9世帯に1世帯というそれなりの割合の人たちがギリギリの生活をしています。
職場で例えると30人程度の部署には3人くらいギリギリを生きていたい人がいるということですね。
調査ではあくまで平均値をとっていますので個々のケースでは違うかもしれませんが、最大の100万円近くの貯金があった場合でやっと3ヶ月耐えられることになります。
一時的な収入減少という話ならばまだ耐えられますが、仮に何かの事情で職を失った場合には2ヶ月というわずかな期間の内に、ある程度条件が揃う企業へ再就職しなければいけません。
だって、再就職して最初の給料がもらえるのは1ヶ月後ですからね。
焦りの再就職は幸運が味方しない限り雇用条件の悪化を招き今後の生活設計に影を落とします。
失業保険がギリギリ間に合ったとしても大きい固定費(大抵は住宅ローン)があった場合は破産からの資産差押え、競売行きの未来が待っています。
破産すればほとんどの借金がチャラになるとはいえ、破産をすることであなたは社会的信用を完璧に失い大きな鉄球の足枷をつけたまま生きることになります。
生活防衛資金を確保するという考え方

生活防衛資金とはその名の通り、何か突発的なトラブルが有った際に人生設計にヒビが入らないように防衛するための資金です。
生活防衛資金が無い状態で日々の生活を送っているのは裸で戦場を駆け巡っているのと同じです。
装備があれば生き残れたはずの流れ弾が致命傷となります。
生活防衛資金はどんな方でも絶対に確保したほうがいいと自信を持ってお勧めできるものです。
いくら用意すればいいのか?
もし、ここまで読んで「なるほど」と納得いただけた方が次に気になるのは「では、いくら用意すればいいのか?」ということでしょう。
生活防衛資金がいくらあればいいということに明確な指標はありませんが、なめくじはあえて以下の通りに目安を提案したいと思います。
この3ヶ月分は限界ギリギリで算出した数値ですので、個々の生活リスクに合わせて更に増やして6ヶ月分や1年分などに設定していただくと丁度いいと思います。
さて、ではなぜ3ヶ月分の目安が必要になるのかを解説していきましょう。
ややこしい計算や理屈に興味が無い方は飛ばしていただいて大丈夫です!
共働きの我が家では常に6ヶ月分の生活防衛資金を現金で手元に残しています
まずセーフティネットの『失業保険』から考えていきましょう。
失業保険では会社都合退職と自己都合退職とでは受け取れる条件が変わります。
会社都合退職では退職日からただちに失業保険の申請手続きを行えば1ヶ月後には失業手当を手にすることができますので1ヶ月間耐えるだけで済みます。
一方自己都合退職では事情が異なります。
同様に手続きを行った場合でも実際に給付されるまでには最低3ヶ月かかるため、3ヶ月分以上の生活防衛資金が必要となります。
どちらの退職であっても、失業保険の受給資格を満たせない場合は残念ながら給付されません。
次に失業保険の給付額から考えてみましょう。
失業保険の給付額には様々な失業した時の状況によりバリエーションがありますが、ざっくりと以下の通りに考えると適切です。
転職に要する期間の面からも考えていきましょう。
複数の転職ポータルサイト(doda、リクナビNEXT、type)によればおおよそ3-6ヶ月を転職活動の目安にすることが推奨されています。
一番悪い条件で考えると6ヶ月(後半3ヶ月は失業保険が適用されるが6ヶ月目以降は給付終了)であることが分かります。
最後に社会保険料と住民税はどうなるでしょうか?
まず国民年金ですが、これは日本年金機構(年金システムの親玉)に申請すれば免除や猶予されますので心配いりません。
厚生年金保険料は会社が行う離職手続きによって勝手に止まりますので、離職後に追加で取られることはありません。
住民税だけややこしく、前年の所得を参照する仕組みのせいで離職してもガッツリ額で請求書が届きます。
ただ、各自治体も失業者に対しては減免制度を設けていますので申請すれば2-5割程度に減額されます。
もう一つややこしいのは、退職日がいつかによって複数月の住民税が最後の給料から一気に抜かれていく可能性があるということです。
つまり、失業するケースによってはまともに最後の月の給料が手に入らないかもしれないということです。
結局どういう計算になるの?
悪い条件を揃えていくと、①クビになった最後の月の給料はまともに入らず②失業してから最初3ヶ月は無収入で③その後3ヶ月は給料額面の50%(給付額は源泉徴収を受けないため)が入るが④7ヶ月目からは無収入に戻り再就職のハードルも高くなる、ということになります。
もしくは失業後2ヶ月で再就職が決まり、3ヶ月経った時点で最初の給料を手にするケースですね。
ここで年間収支がゼロになるカツカツ家庭を考えてみましょう。
調査平均である月30.5万円の支出を相殺するためにはボーナス2カ月分として額面で月32万円程度の収入が必要と考えられ、そのため失業手当は50%の16万円程度が見込まれます。
月支出30.5万円だった家庭が支出をどれだけ削りにいっても短期で20万円まで落とすのは正直不可能です。
でも一応全力で努力して月支出20万円まで落としたとします(ここの誤差はバッファで相殺)。
失業後6ヶ月のうち収入は16万円×3ヶ月分=48万円で支出は20万円×6ヶ月=120万円、その差額72万円が理論上最低値の生活防衛資金となる訳です。
72万円÷30.5万円=2.36ヶ月が生活費ベースで考えた生活防衛資金額ですが、ここからバッファを多少取って3ヶ月というのが現実的にギリギリ妥協できるラインでしょうね。
3ヶ月分であれば、もう一つの2ヶ月で再就職したパターンでも耐えられます。
ちなみに生活防衛資金が3ヶ月分だと失業後7ヶ月目でゲームセットになります。3ヶ月分というのは、あくまで日本人のギリギリを攻めたラインです
失業保険以外のセーフティネットとして『生活保護』がありますが、これは生活が大破してから死ぬまでの間をカバーするためのものですので今回は考慮していません
生活防衛資金を厚めに取ることをおすすめするケース
生活防衛資金を3ヶ月分+αで厚めに取ることをおすすめしたいケースをまとめて紹介します。
以下の条件に当てはまるほど生活リスクが高いため生活防衛資金は厚めにしたほうがいいでしょう。
生活費の計算方法

最後に生活費の計算方法についておさらいしていきましょう。
生活防衛資金の計算としては、生活費を厳密に数百円単位で考える必要はありませんからね。
さて、元々家計簿を付けている方なら楽勝です。
直近数ヶ月~1年間での月支出平均を取っていただければ十分だと思います。
今まで家計簿を付けていない方は「銀行口座の預金残高」が「給料の振り込みから次の給料振り込み直前まで」で大体いくら減っているのかを引き算して出してください。
これも数ヶ月単位で算出して平均していただくとより精度が高くなります。
デジタル家計簿管理をする場合には『家計簿管理アプリ』が便利ですので、もし使っていない方はぜひ試してみてください。
最後に

いかがだったでしょうか。
生活防衛資金がいかに大切なのか、そしてどれだけの金額を見積もっておけばいいか大まかなイメージが掴めたでしょうか。
本記事でなめくじが提案した3ヶ月分というのはほんとに最低限の金額です。
例えていうと30代で十分なキャリアを積んでいる健康な看護師のような、厳しい再就職条件をクリアできる一部の人間でのみ許される生活防衛資金です。
なめくじを含めてほとんどの方がもっと生活リスクが高い状態で日々を送っています。
3ヶ月はあくまで目安として、そこにあなた自身の生活リスクを組み込んで十分な生活防衛資金を算出し、そして準備してください。
本記事の内容で少しでも人生に失敗する人の数が減れば幸いです。
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