各種メディアでインフレ率がどうとかデフレからの脱却とか、毎日のように目にしますよね。
インフレやデフレの意味そのものはだいたいの方が知っているとは思いますが、それらが実際の経済や私たちの日常生活にどう影響をしていくものなのかはご存知でしょうか?
簡単なようで実は正しい解釈が難しいインフレ・デフレ問題。
今回は特にデフレにフォーカスした内容になっていますので、大人の基礎経済学として一緒にデフレについて勉強していきましょう。
インフレとデフレとは

まずはおさらいからです。
インフレは『インフレーション』、デフレは『デフレーション』の略で、それぞれ物価が上昇あるいは下落する現象を指します。
本記事内では、各名称が長いので『インフレ』と『デフレ』で統一しますね。
インフレ
じわじわ物価が上がるインフレそのものは別に何も悪いことではありません。
むしろ軽いインフレ傾向(インフレ率と呼び注視されます)にあったほうが、社会経済としては健全とも言えます。
※各国の中央銀行はだいたいインフレ率2%くらいを目標にしています。
今からおよそ70年前と現在の切手代は10円→84円と実に8倍以上も価格が上昇しています。
これはまさにインフレの結果です。
同じ価値であるはずの切手を今は84円支払わないと買えないということは、70年かけてそれだけ円という通貨の価値が薄まっているとも言えます。
デフレ
デフレはインフレの正反対の現象です。
あなたが「失われた◯◯年〜」みたいな煽り文句を見たとしたら、それはデフレにハマった日本を嘆いている記事です。
以下の表は日本のインフレ率の推移を表していて、「マイナス側に振れる=デフレ」と思ってください。

大きく凹んでいる2002年ではマクドナルドが税別59円(2022年現在は同100円)という史上最安値でハンバーガーを販売したことで話題となりました。
マクドナルドとしては経営戦略で打ち出した施策ですが、これは当時の日本のデフレを象徴するニュースとしてよく取り沙汰されました。
マクドナルドは『ビッグマック指数』という謎の経済指標を持つほどに各国の地域経済に根ざした(=反映する)企業として扱われています
ちなみに世界の覇者アメリカのインフレ率も以下に載せておきます。
リーマンショックの影響が色濃く出た2009年以外は常に軽いインフレを保つ経済の優等生っぷりが伺えますね。

デフレ下では給料が上がらない!

デフレの状態が続くと労働者であるサラリーマンの給料は上がりにくくなります。
それはなぜかというと、「①デフレで物価が上がらないから②企業の売上も上がらなくて③人件費を上げられない、もしくは抑制するから」です。
従業員兼消費者である私たちの心理としては、「デフレで給料が上がらなさそうだから将来に備えて散財は控えて倹約しよう」と考えます。
そしてその結果、物を買うという消費行動が減り更に売上が低迷して人件費が抑制されて…というループに入ります。
このような悪循環を『デフレスパイラル』と呼びます。
また、企業も消費者同様に先行きに不安を感じたら設備投資を減らして内部留保(貯金みたいなもの)を増やします。
そうするとどんどん質の悪い商品しか作れないようになり、海外製の良商品に駆逐されていくことになります。
経済というものは国内で通貨とモノ・サービスが色んなところを行き来するからこそ成長しますので、その行き来が止まるデフレというのは日本経済の発展を邪魔する要因となります。
人件費抑制とデフレの開始は鶏が先か卵が先かという問題に似ています。一つ言える確かなことは「消費者が将来を悲観するほど、備えようと消費行動を抑えてデフレが進行する」ということです
デフレで商品が安くなるのはお得じゃん。ダメなの??
デフレが始まって商品が安くなれば私たち消費者としては助かりますよね。
しかし、その状況が続けば続くほど私たちの給料も上がらないもしくは下がっていきますので、結局はお得ではなくなります。
極端な話、月給10万円で5,000円の商品を買うのと月給20万円で10,000円の商品を買うのは同じことですよね。
お得な買い物をし続けるためには月給10万円になったら5,000円ではなく4,000円とか3,000円の代替品を探す必要がある訳です。
人間誰しもお得になりたいのでどんどん安い商品を選んで買うことになり、需要に合わせて企業は低付加価値の安物を作って売上が下がり、結果的に従業員の給料を下げざるを得なくなります。
「消費者としてお得になりたいがために安い商品を買う」という合理的な行動が、結果的に「従業員としての自分の首を絞める」というのは中々皮肉が効いていますよね。
こういう個人の行動としては正解なのに全体として不正解になることを、経済用語で『合成の誤謬(ゴビュウ)』といいます
給料が減っても価格が下がったら大丈夫じゃないの?
あなたはもしかしたらこう考えるかもしれません。
「給料の変動とインフレ率が一致すれば問題ないのでは?」
先の例で言うと、月給が20万円→10万円に落ちたとしても商品の価格が10,000円→5,000円に落ちたら、買える個数は20個で変わりませんよね。
確かにある側面においてはその通りです。
ただし、現実はある問題があり理論通りにはなりません。
その問題とは『原材料価格』です。
日本は資源が乏しい国土であるため、商品の原材料はかなりの割合で輸入に頼っています。
日本がデフレになったとしても、他国や国際相場の原因によって原材料価格が高騰することは多いにあり得ます。
ここ1-2年で「小麦価格高騰のため値上げします」という張り紙を出している飲食店も出てきましたが、まさに小麦相場の高騰によるものです。
それ以外にも輸送コストや製造するために必要な原油価格の変動でも影響を受けます。
大事なのは「デフレ下=給料が下がる局面でも商品価格が上がることもある」ということです。
『スタグフレーション』というやつですね。現在の日本はこれにちょっとずつ入り始めているとなめくじは認識しています
デフレのメリット

デフレの悪い面ばかり見てきたので、そろそろ良い面もみてみましょうか。
デフレのメリットはずばり「短期的にお金持ちが得をする」ということです。
デフレに入る段階ですでにお金持ち(更に言えば現金を多く持っている)の人からすると、デフレで円の価値が上がっていけば何もせずに資産価値が増えていきます。
例えば100万円の現金資産がある人が50万円の車を買おうとすると2台しか買えませんが、デフレが進行して33万円になったとしたら3台買えるようになります。
現金を持っていない人は下がった給料しか受け取れないので相対的な購買力は変わりませんが、すでに現金資産をたくさん持っている人からしたら多少給料が減ろうが資産の価値が上がったほうがお得なのです。
メリットは基本的にはそれ以外ありません。
ただし長期でデフレが続くと経済がどんどん悪化するので、最終的にはお金持ちも困ってしまうことになります。
お金持ちって大体は自分の事業を持っていたり株式などのデフレに弱い資産も持っていますからね。
理屈上ではデフレで円高基調になれば輸入品価格は下がりますが、現実で必ずそうなるとは限りませんのでここではメリットとして扱いません。また行き過ぎた円高は産業空洞化を招き更に景気が悪化する恐れがあります
まとめ

デフレが進行すると下記の通りの状況が起きて不景気になっていきます。
長期のデフレというのは経済学的には最も避けなければいけない状況ですが、あいにくと日本はその長期デフレをどうにかしようともがいている最中です。
当ブログではお金の使い道を考えて節約して…なんてことをお伝えしていますが、実はコレ個人の行動としては正解でも日本経済全体としては不正解の行動となります。
嫌な言い方にはなってしまいますが、デフレを脱却する一つの解決策は「消費者が後先考えずにバンバン消費する」ということです。
なめくじは決してこの消費行動を推奨する訳ではありませんが、「経済学的にはそういう変なことが起きるんだね」くらいに思っていただければ幸いです。
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